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不器用な夫
第25章 避妊



その仕返しとばかりに公平に馬鹿にされる希望は僕を目の敵にする。


『国松家は執事の躾が悪いな。』


そう希望が言えば絵里美が笑う。


『だから執事に頼るだけの人間なんかにはなりたくないのよ。悔しければお兄様も執事を必要としない人間になれば馬鹿にされずに済みますわよ。』


絵里美はそう言って公平が正しいと評価する。

公平が常に国松の為を優先し僕が馬鹿にされない為にと自分自身で努力する執事だったからだ。

その努力家の執事が僕にコーヒーの入ったカップを握らせて庭に行けと背中を押す。


「彼女だけが大切なのでしょう?」


意地悪に公平がニヤリとする。

大切だとも…。

間違いなく僕はハコだけが大切だ。

それでも母と朝食を食べてる我妻が怖くて尻込みする情けない夫になる。


「ほら…、行って下さい。」


テラスから無理矢理に庭に放り出された。

仕方がなくハコと母が居る天幕の下に向かう。


「遅かったわね。」


母が嫌味を言う。


「夏休みですから…。」


もごもごと言い訳をする。

ハコはまだ僕を見ようとはしない。


「お食事は?」


母が聞いて来る。


「コーヒーだけで結構です。」

「朝をしっかりと食べないから、要さんは力が出せなくて駄目なんですよ。」

「ムキムキ事は公平に任せてますから…。」

「次期当主として、執事頼りとは情けないわ…。」


母が嘆く。

わかってるから僕は出来るだけ公平に頼らない生活をしてますと膨れっ面をするしかない。

国松家じゃ、誰もが僕に子供扱いをするからやりにくいとか考える。


「ハコ…、おはよう。」


とにかく妻の傍に居たいと意思表示だけは示す。


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