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不器用な夫
第26章 迷子



不器用を通り越して鈍臭い夫だと妻に太鼓判を押される情けない自分を嘆きたい。

それでもハコの泣きそうな表情を見るのが嫌だ。


「じゃあ、僕が迷子にならないようにハコが手を繋いでてくれる?」


ハコの手を握る。

ハコも小さな手で握り返して来る。


「逸れないで…。」

「わかってます。」


ハコの頬にキスをする。

今すぐにでも国松の屋敷に帰ってハコをベッドに入れたくなる。

やばいよなぁ…。

浴衣を着たハコが少しだけ大人びて見えるというだけでハコへの欲情心が蠢き出す。


「着きましたよ。」


公平が呆れた声を出す。

ハコが目を丸くする。


「お義父様達は?」


そこには僕と公平とハコだけだ。


「公平はどうする?」

「車を回してから合流ポイントに向かいます。」


そう言った公平は僕とハコを車から降ろして立ち去った。


「どうするの?」


ハコが僕に不安な顔をする。


「僕とハコは屋台で遊んでから船に合流する。」

「屋台?」


今夜は花火が上がる川沿いの道に屋台が立ち並ぶ。

父と母は先に屋形船に乗るが僕と公平は子供の頃から川沿いに立ち並ぶ屋台で遊んでから船に乗る。

川沿いには幾つかの停泊所があり時間を指定しておけば、その停泊所に屋形船が迎えに来てくれる。

約1時間の散歩が僕とハコのデート時間…。


「ハコが楽しめるといいんだけど…。」


慣れない浴衣で歩きにくそうにするハコが大丈夫かと不安にはなる。

不器用な僕の下手くそなエスコートでもハコは必死について来る。


「ねえ、要さん…、あれは?」

「綿あめ…、砂糖菓子だよ。」

「じゃあ、あれは?」

「金魚すくい。紙で出来た網で金魚を掬う遊び。」

「要さんも出来るの?」

「生まれてこの方…、一匹も掬えた事がありません。」


大きな瞳をキラキラとさせるハコがキャッキャッと笑ってくれる。


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