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不器用な夫
第26章 迷子



ハコが笑ってくれるだけで幸せだと思う。

このまま普通の女子高生でいて欲しいとも思う。


「日本のカーニバルって、きちんと礼儀正しく整ってて綺麗だよね。」


アメリカ育ちのハコが初めて見る日本の祭り…。


「アメリカは違う?」

「規模はもっと大きいよ。遊園が丸ごと移動して来るもん。ライブなんかもあって派手なの。だけどゴチャゴチャしてるしゴミだらけ。」

「日本だってゴミは凄いよ。」

「でも、とても綺麗だよ。小さなショップがきちんと整理されて並んでて、その1つづつがどれもキラキラとしてる。」

「うん、綺麗だと思う。」


ハコが目を見開く顔が綺麗だと思う。

白く細いうなじ…。

そのうなじの右下に小さなホクロを見つけてドキドキとかする。

やっぱり僕はエロ親父の年齢になったとか考える。

次の屋台を見ようとハコが首を傾げるだけで興奮を感じてしまう。


「何を考えてるの?」


ハコが疑うように僕を上目遣いで見る。


「へ?」

「要さんから甘い香りがする。」

「えーっと…。」


無意識だったから慌てて辺りを見渡してしまう。

近くに男が居ればおかしな事になりかねない。

ハコとデートするだけでも、そんな気遣いが必要なんだと理解した。

母と出掛けたがらない父…。

そういう事かと納得する反面、ハコを母のように寂しい妻にしてしまう恐怖が湧いて来る。

祖父が船で祖母だけと過ごした理由が見えて来る。


「ハコが綺麗だと思ったから…。」


素直に自分の気持ちを伝えてた。

2人だけになれる場所が欲しいと望む。


「いつものハコだよ…。」


赤い顔をしてハコが目を伏せる。

やっぱり綺麗だと思う。

学生の間では果歩が一番美人だと定評があるけども僕には小さなハコの方が可愛くてキラキラと輝いて綺麗に見える。


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