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不器用な夫
第26章 迷子
そして、その手配の手伝いに寄り添う女性。
太陽のような曽我と並んでも全く見劣りをしない向日葵のような艶やかさを持つ目鼻のはっきりとした美人が曽我を見てる。
「もしかして、曽我君の奥様?」
「……にしたい人。まだ気持ちを伝える事すら出来ずに傍に居させて貰うだけでも必死になる人だ。」
嘘か本当かわからないが曽我が苦笑いをする。
「まだ曽我君の気持ちを伝えてないの?」
「俺、悪いけど奥手だよ。」
「僕じゃあるまいし。」
「やっと見つけた本命ってやつ。だから不安になるって初めて知った。」
「その気持ちはわかるよ。」
僕もハコには振り回されっぱなしだ。
まだ高校生のハコだというのに既に大人であるはずの僕は逆らえない。
「じゃ、今度、時間がある時に…。」
そう言うと曽我が慌てたように彼女に駆け寄る。
曽我が離れるとハコが不安な顔をする。
「どうした?」
ハコにはそういう顔をさせたくない。
「あの人みたいな大人だったら要さんはハコを妊娠させてくれた?」
ハコが曽我の彼女をジッと見る。
曽我の彼女に比べれば明らかに子供だとわかるハコに曽我も驚いた顔をしてた。
それがハコの自尊心を傷付ける。
僕と並んでも違和感を感じない女性になりたいのだと焦るハコが苛立ちを見せる。
そんなハコの顔をゆっくりと撫でる。
「ハコが若いから妊娠を拒んでる訳じゃない。ハコを傷付けたくないから妊娠を遅らせるだけだ。」
「でも…。」
「ハコは若い。その若さは今だけのものだ。その若さを楽しめる時間はあっという間に終わる。僕が曽我君と過ごした時間もあっという間だった。」
学生時代は短い。
国松の母親になる時間はハコの人生の中でほとんどを占める事になる。
「だからね、今はその若さを僕だけのものにしたいんだ。これは僕の我儘かもしれないけどハコにはずっとそのままで居て欲しいと思う。」
子供のままで無邪気なハコが好きだ。
目を輝かせて様々なものに好奇心を剥き出しにする素直な少女を僕は愛してる。