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不器用な夫
第26章 迷子



それでもハコの不満は収まらない。


「そろそろ時間だ。」


悲しげなハコを連れて合流ポイントである桟橋を目指して歩く。

ただ必死に僕の手を握るハコを愛おしいと思う。

曽我が傍に居させて貰うのに必死だと言った言葉がわかる気がする。

僕もハコの傍に居てやりたい。

ハコとは2人だけの場所を作りたいと考える。

桟橋が見えると公平が寄って来る。

かなり不機嫌な表情を公平がする。


「どうした?」


公平がこんな顔をするのは久しい。


「別に…。」


公平が視線を桟橋に向ける。

桟橋には女性が2人…。

姉妹らしくお揃いの浴衣を着てる。

2人ともピンク色で花があしらわれた浴衣…。


「久しぶりね。」


その1人が僕に笑顔を向ける。


「ああ、久しぶりだな。」


一応は礼儀を尽くすが公平が嫌な顔を止めようとはしない。

だから僕は警戒する。


「ご無沙汰しております。」


しおらしく僕に挨拶をするのは妹の亜由美。

相変わらずの人見知りらしく姉の後ろに隠れてる。

絵里美の方は険しい顔でハコを見る。


「国松の奥様はゲストに挨拶もないのかしら?」


そう言った絵里美に僕は目を開く。

そんな言い方をする女性ではなかった。

活発で強気なところはあったが人を傷付けるような発言をするタイプじゃない。

だが明らかに公平が絵里美に敵意を向ける。

ハコが怯えた顔をして僕の後ろに隠れる。

国松の妻とはいえ、僕はまだ当主ではない。

ゲストへの挨拶は父と母がすべき事であり、ハコが上手く立ち回れなくとも、まだ高校生だからと許される範囲である。

それを、いきなり咎める絵里美に何が起きたのかと考える。


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