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不器用な夫
第26章 迷子



名家ではあるが所詮は教授…。


「国松先生のご招待には緊張します。」


と北村教授が微妙な顔で笑う。

母と教授の奥様は前回観た芝居の話を楽しんでる。

そして、何故か招待された五代家の姉妹。

父が絵里美に話し掛ける。


「お久しぶりだね。」

「ご無沙汰をしております。おじ様…。」

「イギリスはどうだった?」

「多くの事が学べました。」


絵里美は機嫌よく父とは話す。


「お兄さんが秋に出馬する予定だと?」

「ええ、ですから是非に国松のおじ様からの支援をお願い致します。」

「僕は政に興味はないよ。政の相談なら、こちらの北村教授にお願いするべきだ。」


父の言葉に絵里美が眉を寄せる。

なるほど…。

経済学者の父…。

政治学の北村教授…。

父が絵里美を呼んだ理由は国松は五代に肩入れはしないと示す為だと納得する。

五代の娘とはいえ、絵里美もまだまだ父からはひよっ子扱いをされる。

当主と当主でないものの格の違い。

僕が学ばなければならない当主としての在り方を父は見せ付ける。

父と絵里美の駆け引きを見るのは必要な事だが、僕の心配はハコにある。

屋形船で出される料理にハコはほとんど手を付けていない。


「寿司や天ぷらは苦手だったか?」


アメリカ育ちのハコに気を遣い最近の母は国松家での食事を洋風のものばかりにしてる。


「ううん…。」


ハコは小さく首を振る。

話が見えない高校生のハコには退屈なだけかもしれないと思う。

花火が上がる音がする。


「食事は花火を見てからにしようか?」


北村教授に挨拶だけをしてハコを隣の部屋に連れ出そうとした。


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