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不器用な夫
第26章 迷子
「要、悪いけど亜由美も連れてって…。」
絵里美が僕にそう言うと食事半ばに亜由美が僕とハコについて来る。
ハコと2人だけで話をしたかったが仕方がない。
隣の部屋に移動すると僕の左にハコ、右に亜由美と並んで座る。
「姉が…、ごめんなさい。」
大人しい亜由美が僕に頭を下げて来る。
「絵里美に何があったんだ?」
ハコは気になるが絵里美のピリピリとした態度について亜由美に確認する。
「何もありません。でも、要さんも悪いんです。」
亜由美が僕を責めるような口調になる。
「僕が?」
「そう…、要さんが国松だからと言うべきかしら。」
「何の話だ?」
亜由美が僕を見上げる。
「最後にお会いした時を覚えてますか?」
亜由美の質問を考える。
大学を卒業する前…。
5つ年下の亜由美はまだ高校生だった。
今の僕の務める学校の学生であり、ハコの大先輩という立場になる。
「私も、もう大人になりましたから…。」
「そうだね。」
ただの昔話だと亜由美に笑顔を向けた。
その僕の鼻に亜由美の鼻が当たり、唇に亜由美の唇が押し付けられる。
「なっ!?」
僕が叫ぶと同時にハコが
「何すんのよ!?」
と叫ぶ。
だけど亜由美の表情は変わらない。
「ごめんね。でも…、貴女と違って私なら今すぐに国松の子供を産めるから…。」
大人しいだけだった亜由美がハコに強気で発言する。
「亜由美、どういうつもりだ?」
「要さんの愛人に選ばれたのは私なの…、お姉ちゃんじゃないわ。私はずっと要さんが好きだった。五代家としても国松のおじ様に私を国松の妻にして欲しいってずっとお願いをしてたのよ。」
そんな話は初耳だった。