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不器用な夫
第27章 家出



亜由美とは1年間だけ教師と生徒として過ごした。

大人しい亜由美。

僕にはあくまでも生徒だった。

だから、今回の愛人候補が絵里美でなく亜由美だという事実に驚いた。


「私はもう30前のおばさんだからと五代の方から却下されたのよ…。亜由美なら若いし亜由美自身も本気で要が好きだと言ってるし。」


絵里美が僕に近付いた。

僕の胸元に手を置く。


「もし、私だったなら…、要はチャンスをくれる?」

「なんのチャンスだ?」

「高校生は妊娠をさせられない。だから、それまでの時間だけで良いから私を妊娠させてみない?」


有り得ない話だ。


「葉子にしか僕の身体は反応しない。」


僕の返事に絵里美が目を見開く。

絵里美の間違いは僕がハコを妊娠させないと考えてるから僕がまだハコには手を出してないとまで思ってる事だ。


「要…。」


僕に軽蔑した顔をする。

絵里美に軽蔑をされても構わない。

まだ絵里美は処女のままかと逆に僕は呆れる。


「悪いけど、学校で問題にさせて貰うわ。」


キッと絵里美が僕を睨む。


「どうやって?」


学校側は既に僕とハコの結婚を認めてる。


「9月から私もあの学校の教師だもの。」

「教師として学生の不順異性交遊は認めませんってか?あの学校にそんな校則はないよ。」

「社会常識とモラルの問題だわ。」

「そんなだから僕は絵里美を選ばないんだよ。僕と葉子の事は放っといてくれないか?」


そういう絵里美だから僕は絵里美が好きでも僕の恋人として扱う気にはなれなかった。

絵里美は真っ直ぐ過ぎたから…。

自分の道を踏み外さない態度を貫く絵里美に国松の妻になって欲しいとは言えなかった。


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