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不器用な夫
第27章 家出
「今から?」
「着くのは朝だけどね。のんびりと京都観光でもしてから藤原家に行く。」
ハコが緊張した顔をする。
「清太郎さんにハコを守って貰う。不器用な僕じゃ無理だから…。」
自分の力の無さを痛感した。
まだまだ僕は清太郎さんに頭を下げる未熟者だ。
曽我は自分を未熟者だともう認めていた。
本命には何も出来ずに狼狽えて不安になる。
それを認めて前に進む。
ハコと夏休み中を京都で過ごす。
それだけでもハコだけが僕の妻だと世間に知らしめる事になる。
後は他の女を藤原が拒否すればハコの立場が多少は守られる。
清太郎さんに未熟者だと叱られる覚悟で僕はハコを連れて京都を目指す。
「朝一番の新幹線にした方が…。」
僕の膝に頭を乗せて欠伸をするハコを車の運転をする公平が心配する。
「一晩だけの辛抱だ。」
僕の言葉にハコも小さく頷く。
絵里美達が居る屋敷に居たくない。
自分のマンションに帰っても良かったが不安なままのハコと1夜を過ごすよりも、ハコと前に進むのだと意志を示す事が大切な気がした。
2時間もすればハコが寝息を立てる。
「なあ、公平…。」
僕は間違ってたのかと公平に問い質す。
ハコを妻とした事。
ハコの為だと言いながら、ぐずぐずと国松の秘密をハコに打ち明ける事が出来ず藤原家を避けた事。
ハコがまだ高校生だからと本当の意味でハコを国松の妻にしないと決めた事。
僕はハコを傷付けただけの夫なのかもしれないと自信を失くす。
「自分にはわかりかねます。」
公平が僕を突き放す。
執事にまで呆れられて見捨てられる情けない次期当主なのだと凹む。