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不器用な夫
第27章 家出



ニコニコとしたままの清太郎さんがハコを縁側に座らせた。


「よく来たね。本当に可愛らしい奥方様でびっくりしてるよ。」


何気なく、そう言った清太郎さんの言葉にハコが身体を強ばらせる。

子供扱いに敏感になってる。

僕が口を挟む前に清太郎さんはそれを見抜く。


「藤原家の当主として国松の奥方様には本当に謝罪をしなければならないと思ってます。今回の事はこちらの判断ミスでした。」


清太郎さんがハコに深々と頭を下げるからハコが目を丸くする。


「要さん…。」


どうして良いかわからずにハコが僕にしがみつく。


「清太郎さんのミスじゃないです。」


ハコの代わりにそう答えても清太郎さんは静か首を横に振る。

やはり清太郎さんは変わってない。

未熟者の僕が招いた問題を自分の責任だと言ってくれる清太郎さんの足元にすらまだまだ僕は及ばない立場だと思う。


「いや、要君が連絡をくれた時に藤原家はまだ必要がないと判断をした僕が間違ってた。その謝罪はやはり奥方様に受け入れて頂かないと…。」


自分にも厳しい清太郎さんを感じる。


「ハコに謝罪とか必要ないです。」


ハコがアタフタとして清太郎さんの前で手をふるふると振る。


「少しだけ…、失礼しますね…。」


スッと清太郎さんがハコに近付きハコの額に手の甲を軽く当てる。

ハコが真っ赤な顔をして俯くから僕は少しだけふてくされる。

やっぱりハコも女の子で中年とはいえ美しい殿方に触れられると感じたりするのか?

つまらないヤキモチを妬く僕を清太郎さんが笑う。


「奥方様を早く休ませた方が良いね。」


そう言って清太郎さんがハコの為に床を用意しろとエプロン姿の女性に言い付ける。


「ハコ?具合が悪いの?」


鈍い僕は妻の具合すらわからない。


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