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不器用な夫
第27章 家出
「貧血だよ。月のものが来てる。」
清太郎さんの言葉に僕もハコも目を見開く。
ハコは更に顔を赤くして小さな手で顔を隠す。
月のもの…。
生理…。
当たり前だけどハコの生理を聞いたのが初めての僕は狼狽える。
「恥ずかしがる事はない。僕はイかせ屋だから女性の月のものや妊娠はすぐに見分ける事が出来る。」
清太郎さんが平然と笑う。
イかせ屋の主は女性の体調を見分ける為に医学部を卒業してるんだったと思い出す。
「少し、2人で休みなさい。話は夕食の時にでもゆっくりとしよう。夕方は料亭の方へ来なさい。」
ハコを布団の敷かれた座敷に案内すると清太郎さんは仕事に行く。
「料亭?」
ハコが不思議そうに僕を見る。
「藤原家が経営する料亭だよ。清太郎さんはそこでシェフをしてる?」
「藤原家の当主が!?」
「うん、国松と藤原はそういうやり方でやって来た家系だから…。」
「何故…、要さんは働くの?」
ハコが社会に出る意味を問う。
僕は教師としてハコを導く責任がある。
「社会に切り離された生活をすれば、それは破滅を意味する。社会に馴染み共に生きる事がその家を継ぐ者には大切な事なんだよ。」
国松とて国が混乱し法が変われば窮地に追い込まれる事になる。
社会や法を認識し、その社会の中の1人として生きる事が出来なければ名家を継ぎ次の世代に渡す事が出来なくなる。
ハコにもそれを理解して欲しいと願う。
別に働く必要まではないが、外の世界にだけは常に興味を持ち視野を広げて欲しい。
それが名家を継ぐ者の義務であり、次の世代への責任であると僕は教わった。
母になりたいと願うハコならば、それを理解してからでも遅くはないと思う。