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不器用な夫
第27章 家出



ハコが唇を噛み、俯く。


「要さんが言うようにハコは子供かもしれない。まだ社会を知らない子供だと思う。それでもハコは要さんの子供が欲しかった。」


たった1夜だけの繋がりにハコは賭けていた。

もし、今、妊娠をしてればと期待してたハコに訪れた生理はハコの希望を打ち砕く。


「それで良かったんだよ。」


僕はハコを抱き締めてキスをする。

後はハコの気が済むまで泣かせてやる。

静かな藤原家にハコの嗚咽だけが響き渡る。

母と同じようにハコにとっての京都も哀しみの始まりになってしまった事を僕は後悔しないと決めた。

夕方までハコを寝かせてた。

とはいえ僕はハコの傍を離れられずに落ち着かない。


「別に、要さんは出掛けててもいいよ。」


ハコが呆れた顔をする。


「お腹…、減ってる?喉とか乾く?お腹が痛いなら薬を貰って来るよ。」

「生理は病気じゃないよ?」

「それでもハコが心配だから…。」

「それは…、先生として?」

「夫としてだよ。」


ハコを失う事が怖いと思う。

父の言う通りに高校生であってもハコを妊娠させるべきかと考える。

そうすればハコを失わずに済む。

ハコにとっては何もない未来になるかもしれないが僕と子供という家族が居る事がハコには幸せなのかもしれないとも思う。

母のように…。

母はそういう生き方を選んだ。

何も出来ずに僕の成長だけを望んだ母。

きっと今は孫を見る事だけを楽しみに生きてる。

その母と同じ人生を…。

僕が少し妥協すればいい事かもしれない。

ハコと果歩は違う。

大学に行き、自分の道を求めるだけが人生じゃないのかもしれない。

絵里美のように自分の道だけを突き進む事が本当に幸せだと言えるのか?

そうやって自問自答を繰り返す。


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