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不器用な夫
第28章 玩具
広い庭園をゆっくりと観光する。
ハコにはつまらないだけで疲れるだけなのだろうかと気になって来る。
「次はハコが行きたい場所だ。」
僕の言葉にハコがニンマリと笑う。
ハコが行くのはとあるレストラン。
アメリカンスタイルのレストランでステーキがメイン料理だが、ハンバーガーも置いている。
「照り焼きじゃないけどいいの?」
「テリヤキは好きだけど今はガッツリ食べたいの。」
生理中の貧血を取り戻すかのようにハコがステーキとハンバーガーにかぶりつく。
「ハコ…、凄い食欲。」
「要さんが食べなさ過ぎなんだよ。」
運動不足で食の細い僕をハコが母のように叱る。
ハコの若さに圧倒される。
僕は若いハコを閉じ込めるだけの夫になる。
清太郎さんから受け取った鍵をそっとポケットの中で握り締める。
これはハコを僕の元へと繋ぎ止める鍵だ。
ゆらゆらと不安定な波に揺られて攫われそうな小舟を繋ぐ舫い。
それを不器用な僕が使えば、舫いは碇に代わり小舟を沈める事になりかねない。
僕はどうすれば…?
キラキラと輝く表情を見せるハコへの愛おしさが増していく。
「次は何処に行きたい?」
ご機嫌になるハコに聞く。
「キンキラの趣味の悪いお寺を観たい。」
ハコがケラケラと笑う。
「趣味が悪いのに観たいの?」
「要さんが観たがる趣や歴史のある場所ってハコには難しくてわかんないもん。」
「少し勉強すればわかるようになるよ。」
「それが怖いの…。」
ハコが切ない顔する。
「ハコ…?」
「要さんが観たがる理由を知りたいと思う。要さんが好きな場所に一緒に行きたいと思う。でも、それをハコが理解を出来るようになるにはハコにまだまだ勉強が必要で、その勉強を頑張るとハコは要さんの傍に居られなくなる気がする。」
ハコが勉強をする間、僕はハコを見なくなる。
その不安をハコが僕に訴える。