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不器用な夫
第28章 玩具



教師だから…。

学ぶ子は僕にとって学生であり、妻でなくなる。

ハコの手が僕から離れる。

僕はその手を慌てて掴むべきなのに、それが出来ずに立ち止まる。

僕の手を離れて飛び立とうとする少女を僕は僕の手元に留める事が出来なくなる。


「逸れないで…。」


泣きそうな顔でハコが逸れた手を僕に差し出す。

その手を再び握る事すら躊躇ってしまう。

僕は不器用だから…。

そう自分に言い訳をする。

躊躇い宙を彷徨う僕の手を焦れたハコが握り締める。


「ハコから離れない約束だよ?」


ハコが僕の目を覗き込み確認する。

ほんの少し僕が首を傾げればハコの唇に僕の唇が重なる距離なのに…。

僕はその距離で固まったまま動けなくなる。

心臓が爆発しそうだ。

全身が熱くて頭が混乱する。

小さな少女が欲しくて堪らないのに、自分では何も出来ないもどかしさに狂いそうだ。


チュッ…。


僕の唇でリップ音がする。


「愛してるの…。」


赤い顔で目を伏せた少女が僕の胸元にしがみつき顔を埋める。

社会常識や道徳なんかクソ喰らえだと思わされる。

僕はこの少女が居なければ生きていけない。

そこまで愛を感じるハコを抱き締める。


「そろそろ藤原家に帰らなきゃ…。」


何かが僕の中でブレーキを掛ける。

そんな僕に少し寂しそうなハコが笑う。

毎日が一進一退のような時間をハコと過ごす。

京都のガイドブックを頼りにハコと様々な場所を見て回り、ハコが食べたいものを食べ歩く。

ハコの生理から一週間…。

ハコが僕に不満の表情をする。


「もうハコに興味がなくなった?」

「そんな訳ないだろ。」

「でも、要さん…、前みたいにおっぱい星人じゃなくなったもん。」


ハコが言いたい事はわかるが、ここは藤原家であり迂闊にハコに興奮すれば性的処理に困るという状況で僕はまだグズグズと迷ってる。


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