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不器用な夫
第28章 玩具
僕はハコを傷付ける。
ハコを守るどころかハコを傷付けるしか出来ない夫なのだとハコに突き付ける。
嫌われた方がマシだと思う。
「まだ高校生のハコに何がわかる?女にはこの身体が何も感じない。別に男が好きだとか思った事はない。だけどハコには感じる事のない身体が男の公平になら一瞬で反応する。」
「か…なめさん。」
「公平を愛してると勘違いした時期もあった。それこそ毎日のように公平と朝から晩までベッドで過ごした事もある。」
「もう…、いいよ…。」
「聞いてよ。公平とは何故別れたか?それだと国松が滅びるからだよ。国松が滅びればこの国が混乱する事になる。ハコは国松が滅びない為だけに僕の妻として選ばれた。」
「……。」
「僕がハコを愛してるから妻に選んだ訳じゃない。ハコは国松が滅びる事を避ける為だけに僕と結婚させられた不幸な高校生なんだよ。」
ビシャッと鈍い音がした。
頬がヒリヒリとする。
ハコが自分の手を押さえてるのが見える。
ボロボロと涙を流してハコが自分の痛む手を押さえ込みながらしゃがみこむ。
振られた…。
ハコに思い切り引張叩かれた頬よりも心の方が痛みを発する。
僕はハコを失う。
僕が愛した小さな少女を僕は自分で遠ざける。
国松の男として孤独に生きて来た。
それに慣れ切った僕は平気でハコを傷付ける。
国松の跡取りを作るだけなら絵里美でも亜由美でも孕ませればいいだけだ。
そこに愛は必要ない。
僕はこれ以上ハコを傷付ける事から逃げ出したかっただけだった。
愛してるから…。
君をこの部屋に閉じ込める事は出来ない。
だから今すぐにでも、この部屋から出て行って欲しいとハコに願う。
僕を見ようとはしないハコが唇を震わせる。
「要さんは…、もうハコを愛してない?」
切羽詰まった声…。
青ざめて恐怖に必死に耐える少女…。