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不器用な夫
第28章 玩具



妻の質問に答える事すら出来ない卑怯な夫。


「始めから…、要さんはハコを愛してなかった?」


繰り返しハコが僕に確認する。

僕が目を逸らせばハコがフッと笑う。


「それでもいいよ。要さんがハコを愛してなくてもいいよ。この結婚はハコの片思いで構わない。だってハコは要さんを愛してる。」


ハコが僕の手を握る。

僕に迷子になるなと示すようにハコは僕の手を小さな手で包み込む。


「ハコは跡取りを作る為だけの奥さんでもいいよ。ハコは要さんが好きだから…、要さんの為なら何でもするって決めて国松に来たんだもん。」


僕の目を覗き込んで笑顔を作るハコに辛かった。

僕は最低な夫です。


「やっぱりハコに妊娠はさせられない…。」


それを言うだけで精一杯になる。

ハコに伝えてやりたい言葉が喉の奥に詰まり息が出来なくなる。

ハコを愛してる。

誰よりも君を愛してる。

だから君を妊娠させる訳にはいかないし、君を傷付ける事も嫌なんだ。

君を傷付けるくらいなら僕を嫌いになって欲しいと思うのにハコはずっと僕を見て笑ってる。


「ずっと先生だけを見てたんだ…。入学してから…、あの人がハコの旦那様になるんだって…。」


ハコが笑顔のまま話す。


「怖い人だったらどうしようってドキドキしたよ。ハコは何も出来ない子だから結婚に必要な事をいっぱい調べて練習もしたよ。」


何もする必要のない生活をしていたお嬢様には大変な事だったに違いない。


「毎日がドキドキとしてハコは凄く楽しかった。先生は覚えてる?ハコが学食に飽きたからって学校の中庭にうちのシェフを呼んでガーデンパーティーをした時の事。」


学校珍道中の1つに登録されてるから忘れる事はないと思う。

理事長に来年度の新入生にはガーデンパーティー禁止の通告を必ず出すとまで言わせた出来事だ。


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