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不器用な夫
第29章 生活
茅野家の信用の高さ…。
ハコが僕の妻に選ばれたのは父の独断ではなさそうだと理解する。
「君は奥様をどうしたいと思う?」
清太郎さんが確認する。
「離婚するつもりはありません。」
それだけは清太郎さんにハッキリとさせておく。
清太郎さんの寝室を出てハコが待つ国松専用の部屋に向かう。
ハコはまだ眠ってる。
今の僕ではハコが意識を失くすたびにハコを裏切るだけの夫になる。
それでも…。
「君を愛してる。誰よりも、何処に居ても…。」
伝わらない言葉を伝えてから、無邪気に眠る妻を抱えて寝る。
明日が来なければ…。
この部屋で僕とハコの時間を止めたい。
叶わぬ夢を見て僕は眠る。
目が覚めるとハコが寂しい笑顔で僕を見てる。
「おはよう…。」
そう言えばハコが僕にキスを強請る。
「今日は何処に行くの?」
服を着替えて清太郎さんが用意する朝食を食べながらハコが聞いて来る。
毎日のように京都を観光してる。
清水寺、知恩院、本願寺…。
まだまだ行ける場所はたくさんある。
「今日は出掛けない。」
僕はコーヒーを飲みながら答える。
「観光に疲れちゃった?」
僕がもう若くないからとハコが笑って聞く。
「違うよ、今日は茅野家からハコのお兄さんがここに来る。」
「兄様が!?」
「そう、だからご挨拶をしなきゃね。」
そうは言ってもハコが落ち着きを失くす。
朝食が終わり縁側でお茶を飲む僕の前を熊のようにウロウロと歩き回る。
「ハコ…。」
「なんで今更、兄様が…。」
ブツブツと呟きながら歩き回るハコが僕の茶碗を蹴飛ばして来る。
「ハコ…。」
頼むから落ち着いて欲しいと懇願したくなる。