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不器用な夫
第29章 生活
僕の言葉が耳に入らない傍若無人なハコの為に僕は散らかるお茶を片付ける。
玄関から音がする。
庭から来ない客は藤原家が本当に気を遣う客。
身内扱いでなく、藤原家と対等である立場を示せる人物が来た事を悟る。
「国松様もこちらへ…。」
僕やハコが通された部屋でなく、藤原家が正式な客として迎える部屋に清太郎さんが雇う女中に案内されて向かう事になる。
和室造りの部屋に敷かれたペルシャ絨毯…。
その上に並べられたレトロな応接。
中世のヨーロッパの家具と和を組み合わせた不思議な空間が存在する。
そこに違和感を感じるだけの現代的で粋なスーツを着た男がレトロなソファーに腰掛けて優雅にコーヒーを飲んでいる。
「まあ、要君と奥様も掛けなさい。」
その男の正面に座る清太郎さんが僕とハコにもソファーを進める。
その位置を確認して僕は少し身構える。
もてなし重視の藤原家だ。
そんな藤原家よりも上座に当たる位置をスーツの男が当たり前のように陣取る姿にピリピリする。
日本の名家との縁が薄い茅野家…。
独自のやり方で世界レベルにまで繁栄を極めた一族は藤原家であろうと国松家であろうと臆する事がないらしい。
「何をしに来たの?兄様…。」
その男にこれまた臆する事ない僕の妻がいきなり噛み付いた。
「お前の為に来たんだ。」
ハコに似た顔立ち。
彫りの深い顔でエキゾチックな男だと思う。
スラリとした長い脚を組んだまま男がハコの顔をジッと見る。
「ハコの為って何が?」
ハコは膨れっ面をすると同時に不安を顔に滲ませる。
15も歳上の父親のような兄にはさすがの天然娘も簡単には逆らえないらしい。
「国松と藤原からハコの縁談が来た時に俺は反対をしたからな。」
ハコの兄は率直にものを言う。