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不器用な夫
第29章 生活



行儀悪くハコがフンッと鼻を鳴らす。


「お生憎様、兄様が仕事、仕事と忙しくしてる間にハコは結婚させて頂きました。」


ハコが居直る姿はやはり子供だと笑いたくなる。

僕と同じように清太郎さんも苦笑いをする。

このまま、この仲が悪い兄妹喧嘩を見てても話はちっとも進まない。


「ハコ…、少し公平と買い物に行ってくれないか?」


僕はハコを藤原家から追い出す事にする。


「嫌よ!兄様って意地悪だもの。きっと要さんを苛めるに決まってる。」


ハコは僕を守ろうと必死だ。

僕はハコにとって、そんなにも頼りない夫なんだと笑うしかない。

同時にハコが僕を愛してるからこそ必死だとわかるから、それだけで満足だと思う。


「この前、ハコと行ったお漬け物のお店はわかるよね?あのお店から母さんにハコが選んだお漬け物を送ってやって欲しい。きっと僕とハコが帰らないから母さんは心配してる。」


母の為だと話を持ち出せばハコは僕に逆らわない。


「でも、要さん…。」

「ハコのお兄さんと話をしたいだけなんだ。」


ハコが唇を噛み締める。

そのハコの顔を撫でて今はハコが居ない方が良いのだと言い聞かせる。

公平を呼び、ハコを退出させる。


「妹を手懐けるのだけはお上手らしい。」


ハコの兄の嫌味。

そのくらいは覚悟の上だ。

僕はソファーから床に座り直して兄を見る。


「要君…!?」


今から僕がやろうとする事を清太郎さんが止めようと慌てて立ち上がる。


「申し訳ございませんでした。」


僕はただ土下座する。

生まれて初めての土下座。

いや、国松家でこれをやるのは後にも先にも僕だけだろうと自分を蔑み笑いながら土下座する。

清太郎さんは僕を立たせようと僕の肩に手を置く。

それでも僕は頭を下げる。

僕がハコを傷付けた事実は否定を出来ないからだ。


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