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不器用な夫
第29章 生活
茅野家からはどれだけ責められても仕方がないという意思を示す。
批難されても仕方がないくらいに僕が未熟者だったというだけの事だ。
わかってて僕はハコとは離婚しないと決めた。
だから僕は茅野家の代表として藤原家に来たハコの兄に頭を下げるしかない。
「頭を上げて座り直して貰えないか?日本人は土下座をすれば何でも許されると勘違いをしているが、俺にはそういう謝罪は不愉快なだけだ。」
ハコの兄は顔色1つ変えずに厳しい言葉だけを投げかける。
「そうですね。それでも僕は日本人だから、このやり方しか思い浮かばない。ハコも僕と同じ日本人だ。貴方だって…。」
「残念ながら俺はアメリカ人だ。アメリカで生まれてアメリカの国籍を取得した。ハコは日本生まれだから日本人のままだが、俺としてはアメリカ国籍を取らせるべきだと考えてた。」
「残念ながらハコは既に僕の妻です。」
僕の言葉に兄が顔を歪める。
僕と結婚した段階で嫌でもハコは日本国籍になる。
「どこまでも日本贔屓な父が国松と藤原からの申し出を断る事が出来なかったからな。」
兄の判断では縁談を断るべきだという事だった。
「国松はハコを守ると約束したはずだった。だが結果はどうだ?君はハコを守る気があったのか?」
どう責められても僕は答える事は出来ない。
「本来なら国松の婚姻は嫡子の出産まで伏せられると俺は聞いていた。だが今の状況はどうだ?口さがない名家の間では国松の妻はまだ高校生で満足に跡継ぎも産めずに国松の夫に弄ばれるだけの不幸な少女だという噂で持ちきりだ。」
ハコの兄の怒りを僕は静かに受け止める。
「同情した名家がここぞとばかりに茅野へと押し掛ける。君には愛人が山ほど居るのだとつまらない告げ口する為だけにね。そんな茅野への侮辱がいつまでも認められると思ってるのか?」
僕がどう言われても仕方がない。
全てが僕のミスであり、僕の未熟さから始まった。