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不器用な夫
第29章 生活
「まさか、君はこのまま藤原家でハコを妊娠させてしまうつもりか?」
兄が目を細めて軽く頭を振る。
僕が放出するフェロモンに逆らおうと必死なのを感じて僕は更に興奮する。
何者であろうと国松には逆らわせずに従わせろ。
それが国松の生き方であり本能だ。
「ハコを妊娠させるつもりもありません。」
「だとしたら君はお坊っちゃまのままでハコを守るつもりはないと宣言した事になる。」
「いいえ、ハコは守られる。力のない僕でなく、茅野家が僕の代わりにハコを守ってくれますよね。」
「それは…。」
「ハコとは離婚はしない。だが一時的にハコはそちらにお返しします。」
「妹ととは別居をすると…?」
ゆっくりと立ち上がり僕は兄の上座へと移動する。
僕の言葉は国松の言葉だ。
僕の意思に兄を従わせろ。
フェロモンは最大にまで高まった。
もはや清太郎さんは僕を見ようとすらしない。
イかせ屋ですらこの状況には逆らえない。
清太郎さんは僕を止める事は不可能だと諦めた。
兄は目を見開き僕の動きの逐一を見逃すまいと真っ直ぐに僕を見る。
「これは別居ではありません。ただの遠距離恋愛ってだけですよ。貴方の妹である僕の妻はとても頭がいい女性です。茅野家に帰れば自分が何をすべきでどうすれば僕の元に帰れるかを模索するはずだ。」
「それを、普通は別居と言わないか?」
茅野家としては国松に娘を帰されたと恥をかく事になると警戒する。
「別居をするつもりはありません。何処に居ようとハコは僕の妻だ。国松の妻に変わりはない。国松は決して妻を手放さない。国松の妻は国松の母になる。ハコは国松の妻として母になる準備の為に一時的に里帰りをするだけの事です。」
この決定に反論は許さない。
僕が兄を見れば兄は口を噤む。