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不器用な夫
第29章 生活
君はきっと怒るだろう…。
口を尖らせて膨れっ面をするか?
泣いて喚いて僕を詰ると予想は出来てる。
僕の決定に君は納得をしてくれない。
君の兄は簡単に納得をさせられても、不器用な僕に君を納得させるのは不可能だ。
だから僕は君の為に土下座した。
君を守る為になら僕は何でも出来るから…。
僕は君を愛してる。
決して君を失うつもりはない。
ただお互いが出会うべき時を少しだけズラすべきだと判断した。
僕が国松の当主としての覚悟を決める時間が必要なように君は僕に相応しい女性になる時間が必要だ。
その決断を下すのは藤原家でも茅野家でもなく、国松家である僕の役目である。
「公平をハコに付けます。」
兄と清太郎さんが同時に驚いた顔をする。
「公平君は…。」
清太郎さんが僕に確認する。
「公平は国松で僕の執事です。僕の妻に常に同行させるのは当然でしょ…。」
何処に居ても君は国松の妻だと公平が居る限りわかるはずだ。
公平ならハコを守る事が出来る。
あれは国松の執事…。
ハコを帰すのではない。
公平を同行させる以上はハコをほんの少しだけ国松家から旅行に出すだけの事だ。
後は夫婦としての信頼だけだと僕は苦笑いをする。
僕って君に信用がないからな。
ハコの兄はもう僕に何も言わない。
「ハコが戻ったら、そのまま連れて帰って下さい。」
「妹とは話をしないつもりか?」
「ハコなら大丈夫です。僕はハコを信じてる。」
根拠のない言葉だと自分でも笑いたくなる。
公平がいつも僕に言い聞かせる言葉だけで僕はハコとの信頼関係に縋るしかない。
この里帰りでハコが僕を見捨てれば、次に茅野家から来る連絡は離婚の話になる。