この作品は18歳未満閲覧禁止です
![](/image/skin/separater45.gif)
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
不器用な夫
第29章 生活
![](/image/mobi/1px_nocolor.gif)
僕に威圧されたままの兄が頭を垂れ、清太郎さんも黙ってしまった状況で僕は部屋を退出する。
体内から吹き出すフェロモンを自分でコントロールしなければならない。
国松専用の部屋に入り中から鍵を掛けて座り込む。
僕は君を失った訳じゃない。
君は頭のいい子だから、僕の決断の意味をちゃんと理解が出来るはずだ。
ハコを信じて待つしかない。
不器用な僕は待つ愛を選んだ。
ハコにどれだけ恨まれても、僕にはその道しか示してやれない。
しばらくは踞ったまま眠ってた。
扉を叩く音がする。
『要さんっ!』
ぼんやりとする僕の耳に扉の向こうから小さくくぐもった声がする。
防音の効いた国松専用の部屋だ。
ハコの声は微かにしか聞こえない。
『要さんっ!お願い…、要さんっ!』
泣いてるとわかる。
今、扉を開ければ僕はこの部屋に彼女を閉じ込める事になる。
何度も扉から鈍い音がする。
小さな手が痛くなるほどに扉を叩く音…。
やがて、その音もしなくなる。
僕は再び眠りに落ちる。
身体中が熱くて堪らない。
フェロモンが僕の身体に男を呼び寄せる。
僕はその欲求と1人で戦う事になる。
ハコを守る為に使った力を清太郎さんに慰めて貰うとか惨めな自分になりたくない。
公平はもう居ない。
ハコを頼むからな…。
見えるはずのない公平を睨みながら全身の痛みと叫びに耐えて過ごす。
少しだけ、くだらない後悔とかする。
ああ、公平の奴…。
ハコのブラジャーをちゃんと着けてやれるのか?
あいつはそういう部分に厳しいからな。
忘れるのを甘やかすと忘れ物は治らないから痛い思いをすべきなんだと僕を甘やかさない執事だった。
![](/image/skin/separater45.gif)
![](/image/skin/separater45.gif)