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不器用な夫
第30章 おかえり
まだまだ夏休み気分が抜けないお嬢様達に僕は野外授業での注意事項を説明する。
「まずは今回の野外授業に同行が出来るパートナーについてだ。本当に自分が信頼を出来るパートナーを選んで連れて来るようにしなさい。」
毎年毎年、自分の婚約者をパートナーとして連れて来る学生が必ず居るが、そのパートナーが浮気したと騒ぎを起こし船から海に飛び込んでやると喚く学生が出没する。
「先生はやっぱり茅野さんと参加をするの?」
僕を冷やかす声がする。
「茅野君はもう、うちの学生じゃないぞ。」
「でも、先生のパートナーでしょ?」
クスクスと嘲笑する声が教室中に湧き上がる。
「茅野君は来ない。次の注意事項を説明するからよく聞きなさい。先生が注意した事を君達が船内でやらかせば退学する事になるからな。」
羽目を外さない。
学生としての自分を辞する生活を試みる。
常識やマナー、礼儀を令嬢という立場で身に付ける為の野外授業。
その船内で非常識を発揮すれば、うちの学校に相応しくない学生としての扱いを受ける事になる。
ハコなら何かをやらかしたはずだと学生の誰もが期待する目で僕を見る。
その期待に応える事が出来ない僕は淡々と注意事項を学生達に言い聞かせる。
非常識の塊のようなお嬢様達を引率する野外授業に神経をすり減らす。
ハコには悪いが、どこかにハコが居なくて良かったとか思う僕が居る。
そういう事を言うと怒るよな?
毎日が疲れて泥のように眠る。
朝は飛び起きて学校に行き、寝癖やネクタイの曲がりすら直せない。
公平とハコが居なければ何も出来ない夫…。
それが今の僕だと笑って開き直ってた。