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不器用な夫
第4章 実家



5分という距離はあっという間だ。

黙ったまま公平が運転する車が屋敷の門を潜り国松家の主屋の前で車を停める。


「今度は明るい時間に来たいな。」


ハコが車から降りて主屋を見上げながら言う。


「明るい時間?」

「国松家のお屋敷って凄いんですもの。」

「別に…、普通だよ。」


1500坪ほどの土地をぐるりと石壁で出来た塀が囲む昔ながらの洋館。

明治の頃から変わらない古びた屋敷がどちらかと言えば僕は嫌いだと思う。

壁に蔦の葉が這い、お化け屋敷を連想する。

やたらと重いだけの観音開きの玄関扉が僕とハコを迎え入れる為にゆっくりと開く。

公平は車の横からは動かない。

その代わりに屋敷から出て来た公平の父親である東が僕に寄り添う。


「おかえりなさいませ、坊っちゃま。奥方様も…。」


東が深々とハコに頭を下げる。

僕はハコの肩を抱いたままハコをこのお化け屋敷の中へと誘導する。

玄関の扉が閉まる時、チラリと東の視線が公平に向けられた事だけを僕は見逃さない。

その東を従えて僕は我が家のリビングとなるサロンへと足を向ける。


「本当に凄いお屋敷…。」


お嬢様のハコが玄関フロアのシャンデリアを見上げながら呟く。


「ハコの実家も似たようなものだろ?」

「茅野家はここまで凄くないわ。」

「けど、茅野家は世界中に家があるんだろ?」

「んー…、アメリカが2つにヨーロッパが3つ、日本とオーストラリアが1つづつだったかな?」

「国松家はここだけだよ。」


そんな会話で笑顔になるハコを東が開く扉の中へと誘えば、古びたサロンで着物を来た女性が座ってたアンティークなソファーから立ち上がる。


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