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不器用な夫
第4章 実家
「今夜も来てくれたのね…。昨日はゆっくりと話も出来なかったから…。」
ハコに飛びつくように母がハコを出迎える。
「お義母様…。」
ハコが少し戸惑いを見せる。
「今日は美味しいケーキがあるのよ。食事の前に食べる?それとも食事後が良いかしら?」
母が僕から奪うようにハコの手を握りアンティークな木目の手すりが付いたカウチソファーにハコを座らせて母がハコを独占する。
「ケーキは食事の後にして下さい。」
僕が戸惑いを見せるハコの代わりに母に答える。
「そうね、ケーキは食事の後にしましょう。でも葉子さんにはたくさん食べて貰わないとまた捨てるだけになるのだし。」
母が僕に嫌味を言う。
「そんな…、私もそんなに食べれませんよ。」
戸惑いながらもハコが母の相手を努めようとする。
「いいのよ…、この家じゃ私はいつも独りぼっち…。要さんすら私には近寄らない。」
母の愚痴が始まった。
「母さん…、だから金曜の夜は家族で一緒に食事をする約束だろ?」
「家族…、そう家族よね。葉子さんがきっと私の本当の家族になってくれるわ。」
「母さん…。」
国松家の呪いに囚われた母に僕は狼狽える。
「お義母様…?」
ハコも不思議そうに母を見る。
「やだわ、ごめんなさい。葉子さんが要さんの花嫁に来てくれたから私ったら嬉しくて…。つまらない話をしちゃったわね。」
母が慌ててハコを見る。
「本当に可愛いらしいお嫁さんなのに…、ごめんなさいね。国松家は婚姻の事実を嫡子が6歳になるまで伏せるしきたりだから…。」
今更を言う母に僕はため息を吐く。
だったら逃げれば良かったのだと…。
僕はハコには母のような思いをさせるつもりがないのだから母の言葉にイライラする。