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不器用な夫
第4章 実家
母の言葉の意味がわからないハコはあたふたとして僕の顔を見る。
「大丈夫です。お義母様…、要さんも優しいし、私は国松家に嫁げただけで幸せです。」
母を気遣うハコを不憫だと僕は思う。
だから僕はその元凶について東に聞く。
「父さんは?」
東は声を潜めて僕に答える。
母の神経を逆撫でしない配慮だ。
「旦那様なら書斎に…。」
東の言葉は響くサロンでは母の耳にも伝わってる。
母は東の言葉など耳に入らないらしくハコの艶やかな髪を撫でながらハコだけを見つめてる。
「要さんは優しくしてくれてる?学校はどうかしら?嫌な事や不自由な事はない?何か必要なものがあれば全て私に言いなさい。」
執事にではなく国松家当主の奥方様である母に言えと母がハコに異常なまでの執着を見せる。
「はい、お義母様…。」
ハコは素直に母の言葉を受け入れる。
そんなハコだから父はハコを選んだのかもしれないと僕は思う。
天然で汚れを知らない少女。
この先、僕が汚し辱める少女に僕はゾクゾクする。
その興奮を振り切るように僕は東に向かって
「父さんのところへ…。」
と声を掛ける。
東は僕を誘うように僕を父さんが居る書斎へと案内をして歩き出す。
母はハコに任せる。
母が国松家の呪いをハコに話す事はない。
今、ハコに逃げられたら母はきっと耐えられない。
狂った家族をハコに押し付けて逃げ出す僕はダメな夫だと思う。
ハコだけは僕が守らなければ…。
その思いだけが僕を支えてくれる気がする。
東の後ろを歩きながら僕はハコの事ばかりを考える。
ふと東が足を止め僕の方へと振り返る。
「公平は?」
それは父親としての質問か、国松家の執事長としての質問かが無表情な東からは読み取れない。