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不器用な夫
第6章 運転
ならば、任せてみようと思いテーブルに座り直してハコの動向を観察する。
たかが洗い物にハコはフリルの付いた裾の短い例のエプロンを身に着けるところから始める。
スタイルから入りたいタイプかと、ままごとな気分でハコを眺める。
だけど、にこやかにハコを眺めてられるのはここまでだった。
エプロンを着け
「よしっ!」
と気合いを入れたハコがキッチンの戸棚や引き出しを片っ端から開け始める。
朝食の片付けなのに料理をするのと勘違いをしてるのかとハコに確認する。
「ハコ…、何をするのかわかってる?」
ハコが馬鹿にするなという顔で口を尖らせる。
「だから食器を洗って片付けるんですよね。」
ハコはちゃんと理解をしてる。
なのに何故かキッチンの引き出しを開けては閉めるを繰り返す。
「何を探してるの?」
「だから食器を洗ってくれる引き出しですよ。中に籠があって、そこに汚れたお皿を入れて洗剤をかけたらスィッチを押すんです。そのくらいの事はハコにだって出来ますよ。」
なんとなく、がっかりした。
ハコが探し求めるものは自動食洗機だ。
てか、洗剤をかけたらってその操作は正しいのか?
何よりもそのエプロンは本当に必要だったのか?
僕の前で平気な顔をして奇行を繰り返すハコを問い詰めたくなって来る。
「ねぇ…、要さん…、引き出しはどこ?」
がっくりと項垂れる僕にハコが聞いて来る。
「ハコ…、うちに食器を洗う引き出しはないよ。」
「嘘っ!?」
そんな事は有り得ないと言わんばかりの顔するハコになんとなく傷付いた気分にされていく。
「食器はね…、手で洗うんだ。」
「手?」
ハコが自分の手を眺める。