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不器用な夫
第6章 運転
実際にやって見せるしかないと思う僕は流し台の前に立ち水を出しスポンジに洗剤を付けて皿の1枚を洗い出す。
「ほら、こうやって洗ったら水で泡を濯ぐ。洗った食器はこの乾燥機に入れて乾燥するだけだ。」
わざわざ僕がやり方を見せたのに…。
「それって本当に汚れが落ちるんですか?」
僕を疑うようにハコが見る。
「これで充分に綺麗になる。」
「なんか…、原始的…。」
げ…ん…し…て…き…。
完全に傷付いた。
1回りも年下の女の子から完全に古臭いおじさんを宣告されたのだ。
ハコがお嬢様なのは理解してる。
だけど一般常識が原始的の一言で片付けられるとか僕の今までの努力が踏み躙られた気分になる。
「原始的でわるかったな。」
ふてくされて僕は洗い物を片付ける。
「要さんも引き出しを買えばいいのに…。」
「引き出しは要らない!」
たかが皿1枚、コップとコーヒーカップが1個づつという洗い物で機械を頼ろうとか思わない。
「うー…、要さんがまた眉間をシワシワにするぅ。」
ハコが僕の服を引っ張るように握って来る。
そういうハコが可愛いけど…。
僕は拗ねたまま洗い物を済ませてしまう。
「要さんってばぁ…。」
ハコが口を尖らせる。
僕は眉間に皺を寄せる。
「せっかくのお休みなのに…。」
ハコが僕にしがみつく。
そう…、今は休日。
この週末はハコと初めて夫婦としての絆を深めると決めたのだから、くだらない不機嫌ばかりをしてる訳にはいかないと思う。
「ハコ…、少し出掛けよう。」
ハコに家を出る提案をする。
「要さんとお出掛け?」
ハコが目を輝かせて僕を見る。