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不器用な夫
第6章 運転
上着だけを羽織りご機嫌になるハコを連れて地下にある駐車場へ向かう。
「公平さんは?」
ハコが運転手はと聞いて来る。
「僕が運転するんだよ。」
「えっ?嘘っ!?」
ハコが目を見開いた。
悪いが不器用でも車の運転くらいは僕にも出来る。
なのにハコは…。
「だって…、要さんって自転車にも乗れないのに…。」
と僕が傷付く言葉をまたしても呟く。
行事ごとの都合で広い学校内を移動するのに自転車を使う教員が居るが僕は自転車に乗れないからと学生が乗る送迎バスに乗り合わせる。
それを知るハコは僕の運動能力に疑いの目を向ける。
「そりゃ自転車には乗れないけど、車を運転する免許はちゃんと持ってます。」
「本当に大丈夫?」
「貴女の夫を信じなさい。」
信じ合えるほどの仲じゃないがそう言って僕が車の運転席に乗り込むとハコが助手席に乗り込んで来る。
「死ぬ時は一緒だからね。」
ハンドルに置いた僕の手にハコが自分の手を重ねて可愛らしい笑顔を見せる。
失礼な…。
事故する前提のハコに苦笑いをして車を出す。
「要さん…、超安全運転…。」
車が走り出すとハコが欠伸をする。
「事故はしたくないんでしょ?」
「でも…、法定速度で走ってるのは要さんだけだよ。」
クラクションを何度も鳴らされてバンバンと他の車に抜かれる不器用な僕をハコが呆れた顔で見る。
「どうせ僕は何をやっても不器用で下手くそな男ですから…。」
いじける僕をハコがクスクスと笑う。
「やっぱり要さんって子供みたい。」
学校では見せない僕の姿にハコが笑ってくれる。
僕は学校では見れないハコにドキドキとする。