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不器用な夫
第6章 運転
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公平なら15分で行ける場所へ僕の運転で30分掛けて移動する。
着いた場所の駐車場へと車を入れる。
「ここは?」
ハコの質問に答える事が出来ない。
今はここの駐車場に車を停める事だけに必死な僕はハコに答えてやる余裕がない。
「ハコがやってあげようか?」
もたもたと車を停めてから、安堵にため息を吐く僕に気遣うハコが言う。
「ハコが?」
「アメリカのお家では何度も車の運転をした事があるもん。多分、要さんよりも上手いから…。」
「日本では免許のない人に運転はさせられない。」
「それはアメリカでもそうだよ?」
「わかってるなら言うなよ。」
自分が不器用なのは嫌というほどわかってる。
だからといってスマートに公平に運転をさせてハコと出掛けるのは気が引ける。
「要さん…?」
「とにかく目的地はここ。」
駐車場を出てその店の前に立つ。
「本屋さん?」
ハコが目を丸くした。
「そうハコにプレゼントしたいものがあるからね。」
「プレゼント?」
ハコが大きな目を輝かす。
店に入り、ハコを連れて真っ直ぐと向かうのは参考書のコーナーだ。
「まさか…。」
「古典用の参考書、僕が選んであげますから。」
「要りません。」
「やって貰うよ。次の試験も古典だけが赤点だと困るからね。」
「赤点じゃないもん。」
「後1点というギリギリは赤点と同じだ。」
有無を言わさずにハコが試験用に勉強が出来る参考書を選んで買い与える。
「夫からの初めてのプレゼントが参考書って…、ハコって不幸だぁ。」
帰りの車の中でハコが嘆く。
「信じられない!参考書だよ?この週末は夫婦として過ごすって言ってて参考書…。要さんってどこまで行っても学校の先生のままなんだ。」
大袈裟に騒ぎ立てるハコはやっぱり女子高生なんだと改めて思う。
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