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不器用な夫
第7章 紳士
前はあまり旨いと感じなかったハンバーガーがハコとなら普通に食べられる。
本当に美味しそうに食べるハコを見てると僕もそれなりに美味しいと感じるらしい。
ハコとなら…。
僕が変われる気がする。
それは気休めでしかないのかもしれないが僕はハコの中に微かな希望を懐く。
「帰るのやだなぁ…。」
ハンバーガーショップを出た途端にハコが情けない顔に変わる。
「試験が済んだら、また2人で出掛けよう。」
次はもう少しちゃんとしたデートをハコにしてやりたいと考える。
「本当に?」
ハコが疑いの目で見る。
「貴女の夫を信じなさい。」
根拠のない言葉を述べる。
不器用で女の子が喜ぶような場所には行けない夫だけどハコが行きたい場所くらいには連れて行けるようになれる努力をしようと思う。
再び、もたもたと車を運転して家に帰る。
「すぐにやらなきゃダメ?」
コーヒーを入れる僕にハコが参考書を抱えて往生際の悪い姿を見せて来る。
教師としての考え方だが生徒に勉強を強要したところで身につくとは思わない。
しかし、ずるずるとハコを甘やかすつもりもない。
「追試や留年になりたくないならね。」
そんな事になれば遊びに行くどころか下手すれば離婚する事になる。
国松家からはそういう条件がある程度が出てるはずだとハコに確認する。
諦めたハコがダイニングのテーブルにコーヒーを置いた僕の目の前で参考書を広げる。
「要さんが教えてくれるんだよね?」
「それは出来ない。」
「嘘っ!?」
「それをすればカンニング扱いになる。」
社会の常識…。
それを僕が口にするとハコが口を尖らせる。
「要さん…、真面目過ぎる…。」
「僕はそういうつまらない男です。」
ハコに言われなくとも自覚してる。