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不器用な夫
第7章 紳士



ひたすら目立つ事を嫌い、公平にすら近寄るなと命じる学校生活。

昼休みの食堂では


「なぁ、お前のクラスに国松って奴が居る?」

「国松?そんな奴…居たっけな?」


といった会話が僕の背中越しから聞こえるほど僕は影の薄い学生を貫く。


「国松って奴になんか用事があんの?」

「俺にはよくわかんねぇけど、国松家の御曹司って奴で、そいつと付き合いしとけば将来は安泰だってうちの親が言うんだよ。」

「そんなすげー奴がうちの学校に居たか?」


こういう人間関係を避ける事も国松家では必要なのだと寂しい学生時代を過ごす。

ハコが通うような完璧なお嬢様学校ではなく、進学校に近かった僕の学校では名家の子供達も通うが一般的な学生も多かった。

そのお陰で僕は目立たずに地味な学校生活を送る事が容易い。

しかも…。


「それってマジかよ?曽我って京都で国立の医学部狙いしてんの?」

「東京にだって医学部はいくらでもあるじゃん。」

「なんでわざわざ京都だよ?」


と一際、目立つ集団が騒いでる。

そういう目立つ存在が居れば僕はますます目立たない存在で居られる。

その中でも最も目立つ男がゆっくりと口を開く。


「京都で学ぶ事があるんだよ。」


低く重みのある声。

だけど篭る事なくビンッと響く彼の声は食堂の片隅で昼食を食べる僕のところまで届く。

いつ見ても彼は5~6人の学生に囲まれてる。

誰よりも背が高く、強面なのに不機嫌な表情を見せた事がない曽我は必ず集団の中心に居る。

日陰を好む僕とは対象的な太陽が注ぐ陽の光の中で輝きを放つ曽我をそうやって遠巻きに眺める。


「曽我は居るかー?」


学校の先生が食堂に彼を探しに来る。


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