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不器用な夫
第1章 初夜



「わかった。わかったから…。」


僕はハコを出来るだけ見ないようにして彼女の頭を撫でてやる。

サラサラの髪が僕の指の間をすり抜けるたびに、指はその髪を求めるようにハコの頭を撫で続ける。

ハコはハコなりにこの結婚に必死なのだと感じる以上、男として悪い気はしない。

いや…、ちょっと待て…。

そもそも国松家に嫁ぐ為の練習とはなんなのだ?

ふと、そんな事が頭に過ぎる。

他の名家はともかく国松家は自由だ。

国松家は普通の名家とはそもそもの成り立ちが違うのだから、国松家に必要な花嫁修行など全く存在しない。

他の名家のほとんどが一族による企業の運営などを軸にしている。

他は歴史的一族の末裔だとか…。

地主的立場で名家を保つ一族なども珍しくはない。

そんな中での国松家は異色の存在である。

国松家は企業などは持ち合わせていない。

資産としての土地は多少あるが地主的存在でもない。

元来の国松家は金貸しだ。

それも規模として国レベルに資金を貸し出す金貸しが国松家の役割だ。

今、国に貸してる国債金利だけでも国松家の利益は財閥並にまで成り上がっている。

国が潰れない限り国松家はご安泰という家系では当主は自由気ままな身分である。

現に現当主である父は気まぐれで大学教授という職を選び自分がやりたい自由気ままな研究を繰り返すだけの日々を送ってる。

そんな父に嫁いだ母は生粋の箱入り娘で何も出来ないお嬢様だった。

家事などは全て召使い任せのお嬢様。

研究に没頭する父に寄り添うだけの母。

そんな父と同じように気まぐれで教師を選んだ僕に嫁いで来たハコに何の努力が必要だったのかと聞きたくなる。


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