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不器用な夫
第7章 紳士
タダでさえ酸欠の身体で息を止めてたのだから頭がクラクラとする。
そんな僕の顔に更に自分の顔を近付けて覗き込む男が僕にもう一度聞いて来る。
「なぁ、お前…。大丈夫か?それと前から気になってたけどお前のこの匂い…。」
そこまで彼が言った瞬間に僕の腕を握る彼の手を振り払う。
「君には関係ない。」
かろうじて彼に答える。
「けど…。」
「悪いが僕に近寄らないで欲しい。」
「えっ?」
彼が傷付いた顔をする。
その厳つい強面の顔が悲しげに歪むとか考えてもみなかった。
それでも今の僕は学校1番に目立つ彼と一緒に居る事を拒むしかない。
何故なら今の彼は明らかに僕のフェロモンに反応してるとわかる。
顔を赤らめて初恋の女の子に振られたような顔で狼狽えて下を向く曽我から僕はとにかく逃げ出す事だけを考える。
曽我がこれ以上、僕のフェロモンに反応すればこの先の学校生活では曽我が僕にベッタリとまとわりつく事になりかねない。
曽我がただ困った顔を僕に向ける。
捨てられた仔犬のような表情で僕に縋る視線を放つ彼に僕の鼓動が高鳴る。
「国松…。」
そう低く呟く声に全身が貫かれる感覚を感じる。
「僕には近付くな。」
国松家の男として命じるように曽我に言う。
国松家のフェロモンに晒された男は国松家の男の言葉に逆らえない。
だから国松家は異形な手段で栄えて来た。
国の運命を左右出来るほどの権力を手に入れた。
そして、それを維持する嫡子を確実な手段で残す事が一族の運命となった。
僕の言葉に目を見開き固まる曽我を残し、その場から立ち去った。
この時…、2度と曽我が僕に反応しない事だけを僕は願うしかなかった。