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不器用な夫
第8章 当主
言われてみれば、何かと曽我が公平と一緒に居る姿を見た覚えがある。
「本来の香りの持ち主は自分の存在を隠すのが上手いよな。」
嫌味を言い曽我が僕を睨む。
睨まれても迷惑だ。
フェロモンを撒き散らしながら、その正体は僕だと学校中に触れ回れば僕は毎日、入れ替わる男どもにレイプされるだけの学校生活を送る事になりかねない。
「最近になってやっと香りの主が国松だってわかったから、俺はただ嬉しかっただけなんだ。やっとその香りの正体を確認する事が出来るんだって…。」
曽我は藤原家の跡を継ぐと決めた男。
今の曽我は『イかせ屋』としてまだ見習いの立場だと言う。
その『イかせ屋』として僕が放つフェロモンに曽我は興味を抱いた。
「花が蝶を引き寄せるようにして国松は様々な人を引き寄せる。イかせ屋としちゃ、その秘密を喉から手が出るほど知りたいと興味を示して当然だろ?」
そこまでを話すと僕を見る曽我の目付きと表情がガラリと変わる。
「すまなかった。俺のくだらない興味がお前を傷付けるなんて考えてもみなかった。」
本気で曽我が頭を下げて来る。
「別に、曽我君が謝る事じゃないよ。」
僕は狼狽える。
誰からも愛される彼がつまらない僕に必死に頭を下げる姿に胸が痛くなる。
曽我も既に僕が放つフェロモンの影響を受けてるのだろうか?
その不安が頭に過ぎる。
フェロモンのせいなら曽我を責める事は出来ない。
それどころか曽我を公平のように僕から引き離さなければとか考える。
僕の考えとは裏腹に曽我が真っ直ぐに僕を見る。
「夕べ、叔父がうちに来たんだ。俺は叔父から教わり初めて国松家の事を理解した。その叔父からの伝言を持って来た。」
ベッドに座ってた曽我がゆっくりと立ち上がる。