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不器用な夫
第8章 当主
「本日は藤原家当主より国松家次期当主への伝言を預かって参りました。両家のますますの発展と今後の友好関係の確認を話し合うべく国松家次期当主である国松 要殿を是非にも我が藤原家に招待をしたいと当家の主が申しております。」
まるで名家の執事のような態度で曽我が僕にお辞儀をする。
「曽我君…。」
目を丸くする僕に曽我がもう一度頭を下げて来る。
「申し出は受けて頂けますでしょうか?」
申し出…。
藤原家からの呼び出し…。
しかも、相手は国松家よりも格上の藤原家当主。
次期当主とはいえ、僕はまだ何の権限も持たない平凡な高校生だ。
「僕が行けばいいの?」
情けなく不安な声が出た。
「うん…、俺も一緒に行くからさ。」
曽我が少年のままの笑顔を見せた。
しばらく曽我とお互いの話をする。
「叔父からめちゃくちゃ怒られた。」
「何故?」
「『国松家の次期当主になんて無礼な振る舞いをしたんだ。だからお前は未熟過ぎるといつも言うのだよ。まだまだお前のような未熟者がイかせ屋を名乗る資格はないと心得ろ!』だってさ…。」
「別に無礼とか…、思ってないよ。」
「なら、俺とは友人として接してくれないか?」
曽我からのそのような申し出は涙が出そうなほど嬉しい話なのに…。
「それは…、無理なんだ。」
「なんでだよ?俺みたいな未熟な男じゃ頼りないって事か?」
「違うよ…。それが国松家の男の運命だからだよ。」
「それでお前は辛くないのか?」
曽我が僕の為に必死になる。
嬉しくて、辛い曽我の言葉。
曽我と友人として過ごす事は僕にとって地獄にしかならない。