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チカちゃん先生のご褒美
第5章 チカちゃんの手は滑り止めの手

   *

「……よく頑張ったね……!」

 いつもの面談室で、チカちゃんは目を潤ませていた。
 俺も野際も、合格だった。 
 これで、少なくとも、チカゃんが心配していた「卒業と同時に路頭に迷う」って事は、なくなった。

「うん!チカちゃんのおかげ!」
「ほんと、チカちゃんは最高の先生だよ!!」
「二人ともっ……」

 バッグからペンギン柄のタオルハンカチを出して、目元を押さえるチカちゃん。
 
相変わらず、かわいい。かわいすぎて、ヤバい。

「チカちゃん?」
「なあに、野際くん……」
「感動してるとこ、恐縮ですが……」

 チカちゃんの方に、向き直る野際。いつも焦り過ぎなんだよ、お前。
 まだ、試験は有るんだぞ。焦り過ぎて解答欄ずらすとか、ケアレスミスはすんなよな。

「……もう、こんななんですけど……」
「えっ?」

 チカちゃんが、俺を見る。
 内川くんは違うよね?とか思われてるのかもしれないけど、真実はいつも一つだ。仕方ない。

「実は、俺も……」
「えっ、えっ?……も、もうっ?」

 ……だって、俺ら、若い男子だよ?
 前回のご褒美から、どんだけ間が開いたと思ってるんだ。

「それだけ我慢して、勉強してたって事だよ」
「もう、いい?チカちゃん」
「まっ、待ってっ……」

 今にも立ち上がってズボンを下げそうな俺らに、チカちゃんは焦った。
 いつもみたいに立ち上がってドアの前に行ったけど、少し考えて、そこに椅子を置いた。
 立ったまま両方触るのは無理だって、思ったらしい。
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