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チカちゃん先生のご褒美
第8章 知佳先生の奮闘

   *

「ん……あ、だめってっ……」

 三年の担任を持って初めての卒業式は、無事に終わった。
 夜は、慰労会があるんだけど。

「すげえいけないことしてる気分になれて良いよな、袴でするの」

 太郎さんに化学準備室に呼ばれて、あちこち弄られてる。
 いけないことしてる気分、って……前も袴でしたことあるの?って聞きたくなっちゃう。

「だめってばっ……あの二人に、『祝・処女卒業』とか言われちゃったんだから」

 それを聞いても、全然やめようとしない。

「へー?あいつらに、言ったの?」

 逆に、にやって笑われた。

「言う訳無いじゃんっ!!多分、適当に言ったんだろうけどっ……ぁふ」

 脇から手を入れて胸を触ってた手が、今度は袴の裾を捲った。

「へえ、履いてるんだ……でも、紐パン?」

「ちがうっ……下ろしやすいように、ローライズっ」

「俺のために?」

「ちがうって……は……」

 トイレに行きやすいように、って言わないうちに、履いたままでいじられた。

「あ……っ、ん」

「知佳、そこ掴まって」

 太郎さんが、窓枠を指差す。

「窓っ……、外、」

「下からなんか見えないし、見えたとしても袴が邪魔するって」

「もうっ……あ」

 仕方なく窓枠に掴まったら外が見えて、帰って行く生徒が見えた。

「どうした?」

「ん……内川くん」

「最後だろ?挨拶してやったら」

 こんな格好で?
 ひどい事を笑顔で平気で言う恋人に、逆らえない。
 窓から乗り出して、名前を呼んで、手を振る。

「うーちかーわくーーーん!!……ぁ」

 ぐしょ濡れのローライズの縁から、指が滑り込んで来る。

「名前呼ぶだけ?挨拶は?」

 睨み付けてやりたいけど、振り向けない。
 振り向いたらもう外を見てなんか居られなくなる。

「おめでとぉおー!元気でねー!!……っ!」

 指が、中に、入ってきた。
 ぎゅっと掴んでる窓枠に、崩れそうになる。

「ありがとー、チカちゃーーーん!!」

 内川くんは大きく手を振ると、校舎に背を向けて歩き始めた。

「は……あ、ぁ、やっ……」

 内川くんの後姿を見ながら、窓を閉めて、振り返った。
 
「よく出来ました、チカせんせ。お疲れ様のご褒美をあげよう」

 恋人は笑ってそう言ってローライズを引き下ろしながら、睨み付けている私に、キスをした。
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