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僕の美しいひと
第7章 僕の美しいひと
その知らせを聞いても、郁未は驚いたりはしなかった。
原嶋の情熱的な愛があれば、若い清良の心を動かすことは難しくはないだろうと予想ができたのだ。

…それが一番いい…。
清良の幸せには、最良の選択だ。

原嶋は清良の過去をすべて認め、清良を守るつもりでプロポーズしたのだ。
その上、原嶋にはやわな貴族階級の人間には持ち得ないバイタリティと人間力が備わっている。
戦後のこの混乱を生き抜くには、彼のような逞しさと強さを合わせ持った人間でなくてはならない。
原嶋は清良を幸せにするだろう。
貧しかった幼少期を過ごした同士、共感し合い、尊重し合うだろう。
清良の結婚相手に、これ以上の相手はいない。

…自分など…清良には相応しくない…。
自分の人生に自信も持てないような男だ…。
清良を幸せにできるわけがない。

…そうだ。
彼女を幸せにする自信がないような男に、彼女の愛を乞う資格はない。

郁未はそうして、誰にも語ることなく、清良のことを胸の奥深くに封印したのだった。
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