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僕の美しいひと
第7章 僕の美しいひと
「…清良の結婚式の日取りが決まったそうだ」
鬼塚がどこか苛々した様子で、院長室の扉を開けて入ってきた。
郁未は手にした万年筆を思わず強く握りしめた。

「…そう…。それは良かった…」
「おい、それは本心か⁈」
珍しく語気を強めながら、郁未の前に立ちはだかる。
「お前は清良が好きで、清良もお前を好きなんじゃないのか?
いいのか?このままで」
荒っぽい口調には、郁未へのもどかしいまでの心配が見て取れた。

「…いいんだよ、これで…」
「なぜだ⁈清良の過去が露呈することを恐れているのか?
そんなもの、どうにかなるだろう!
いざとなったら俺がなんとでもしてやるよ!」
「…違うんだ…」
「違う?何が違うんだ⁈」
郁未は立ち上がり、鬼塚と視線を合わせた。
「…僕が…自信がないんだ…。
清良を幸せにする自信がない…清良が僕と一緒になって不幸せにしてしまうことが怖い…。
彼女を傷つけたくない…踏み出す勇気がないんだ…」

「…郁未…。
誰だって、自信はないさ。
人を一人幸せにするなんて、大変なことだ。
傷つけてしまうこともあるかもしれない。
けれど、愛していたら…愛し合っていたら必ず乗り越えられる筈だ」
噛んで含めるように優しく諭される。

「…鬼塚くん…。
僕には愛が分からない。
…清良が好きだよ。誰よりも…。
でもだからこそ、傷つけたくない。ほんの少しでも…。
あの娘は、今まで苦労ばかりしてきた。
ようやく幸せになれたんだ。
その幸せを曇らせたくはない。
絶対的に幸福でいてほしい。それが僕の愛だ。
…それに…」
郁未が寂しげに端正な眉を寄せた。
「…清良が婚約を承諾したと言うことは…彼女が原嶋氏を愛し始めていると言うことだ…。
…清良は自分で新しい人生を生きようとしているんだ。
…もう、僕の出る幕ではないんだよ…」

鬼塚は深いため息を吐いた。
「…本当に…お前はそれでいいのか?」
…いい訳ではない。
清良を失った寂しさと虚しさは、心にぽっかりと大きな穴が開いたかのようだ。
…けれど、耐えなくてはならない。
耐えられない筈はない。
…今までもずっとひとりだったのだから…。
そして、これからも…。

「…これでいいんだ。
清良は、きっと幸せになる…。
僕にできることは、彼女の為に祈ることだけだ…」
郁未の無機質な言葉を、鬼塚は黙って聞いていた。
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