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僕の美しいひと
第7章 僕の美しいひと
「…笙子さん…?」
「…私にはかつて、とても愛している方がおりました…」
笙子の古典的絵画のような端正な横顔に、翳りが帯びる。
「…けれど、その恋は禁じられたものでした…。
決して愛してはならないひとを、私は愛してしまったのです…」
郁未ははっと息を呑んだ。
…もしや…その相手は…。
鬼塚の面影が一瞬、よぎる。

「…私はその方に私の想いを告げることはありませんでした…。
その方を、困らせたくはなかったからです…。
その方は私を…ひとりの女としては見てはいなかったから…」
…やはり、そうか…。
笙子さんはずっと鬼塚への想いを抱きしめていたのか…。
…時折見せる切ない眼差し、美鈴を見る遣る瀬無いような表情にそれらの想いは透けていた…。
それは、郁未もかつては鬼塚を同じ想いで見つめていたからこそ、感じ取ることができたのだ。


笙子の白い芍薬のような美しさを秘めた貌が嫋やかに微笑った。
「…私は今、とても幸せです。
優しくて頼もしい主人に愛され守られ、可愛い…何ものにも代え難い子どもにも恵まれて…。
これ以上はないほどに幸せな毎日を送っております」
…けれど…と、不意に妖しいまでの色香を滲ませ…ひとりごとのように続けた。
「…時折思うのです。
…もし、あの方に私の想いを告げていたらどうなっていたのだろうと…。
…良いとか悪いとかではなく…。
もしも…と…。
…私には全く違う人生が待っていたのではないかと…」
「…笙子さん…!」

笙子はすぐにもとの嫋やかな表情に戻り、微笑んだ。
「…郁未さんが為すべきことをなさってください。
私が申し上げられるのは、それだけですわ」

笙子の静かな…しかし誰よりも熱く激しい秘めた想いを知らされ、郁未の心は揺さぶられた。
同時に、今までの迷いが霧が晴れるかのように消え去っていった。

「…ありがとうございます。
貴女のお言葉を、無駄にはいたしません」
笙子の美しい眼を見て頷き、玄関ホールを横切る。

同時に扉が開き、長身の男が静かに現れた。

「笙子さん、迎えにまいりましたよ。
…雪が舞ってまいりました。
随分、早い初雪です…」
笙子の夫…岩倉が穏やかに声をかけながら佇んでいた。


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