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僕の美しいひと
第5章 新たなる扉
「嫌!絶対に嫌!
あたしはここも、あんたも大好きなんだよ!」
抗う清良の肩を強く押さえつけ、鋭く言い放つ。
「清良!忘れるんだ!
僕のことなど…全て忘れろ!」
「あんたの気持ちは⁈
本当に、あたしのことは愛していない⁈
少しも⁈」
縋り付くような必死な眼差しに、胸が激しく痛む。
…しかし…。
心を鬼にして、冷ややかに突き放す。
「…ああ、まったく愛していないよ。
君のことなど…。
だからそんな風に思われても、迷惑なんだ」
清良の美しい貌が引き攣り、その大きな黒い瞳に涙が溢れた。
震える口唇を噛み締め、じりじりと後退りする。
やがて真珠色のドレスの裾をふわりと翻し、走り去った。
「清良!」
追いかけたい気持ちを必死で堪える。
清良の白いドレスが闇に溶け込み、消える。
…あとには、虚しいまでの夏の夜の暗闇が広がっているばかりであった。
「…清良…。君には輝かしい未来がある。
…幸せになるんだ…。
…僕などより遥かに素晴らしい相手が…必ずいるはずだ…」
…清良の微かな靴音が遠ざかり…消えた。
…蓄音機のレコードは針が回り続ける音だけが、無機質に流れ続けていた…。
あたしはここも、あんたも大好きなんだよ!」
抗う清良の肩を強く押さえつけ、鋭く言い放つ。
「清良!忘れるんだ!
僕のことなど…全て忘れろ!」
「あんたの気持ちは⁈
本当に、あたしのことは愛していない⁈
少しも⁈」
縋り付くような必死な眼差しに、胸が激しく痛む。
…しかし…。
心を鬼にして、冷ややかに突き放す。
「…ああ、まったく愛していないよ。
君のことなど…。
だからそんな風に思われても、迷惑なんだ」
清良の美しい貌が引き攣り、その大きな黒い瞳に涙が溢れた。
震える口唇を噛み締め、じりじりと後退りする。
やがて真珠色のドレスの裾をふわりと翻し、走り去った。
「清良!」
追いかけたい気持ちを必死で堪える。
清良の白いドレスが闇に溶け込み、消える。
…あとには、虚しいまでの夏の夜の暗闇が広がっているばかりであった。
「…清良…。君には輝かしい未来がある。
…幸せになるんだ…。
…僕などより遥かに素晴らしい相手が…必ずいるはずだ…」
…清良の微かな靴音が遠ざかり…消えた。
…蓄音機のレコードは針が回り続ける音だけが、無機質に流れ続けていた…。