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ガーネット弐番館
第6章 ルール
「話があるんだけど」

昨日と同じように、今度はフライパンで作ったパエリアをそのままコタツに運ぼうとしている航平の前に立ちふさがる。

ちょっとムっとした顔をしたけど、ひるむものか。

「今?」

一息ついて、無表情でフライパンを軽く掲げた。

「...置いてからでいいけど」

ひるんじゃった...。

いかんかん。


2人してコタツの定位置に静かに座る。

めちゃくちゃイイ匂いだし、ガラスの蓋の上からも彩よく見えるパエリアは、すごく美味しそうだ。
睦美だって、出来立てを今すぐ食べたいけども。

食べ出したら、というより、飲み出したら話どころでなくなる。


「何、話って」

話出すのを躊躇っていると、明らかにあきれたような声がする。

「えっと、その...」

車の中で、シュミレーションしたはずなのに。

いざとなると、言いだしにくい。


「その...、期限を決めない?」


「は?」


顔が直視できないので、雰囲気だけだが、またちょっとムっとしてるのが分かる。

ムっとされても。


「っていうか、決めてほしい」

睦美も、正社員にも慣れてきたし、一人暮らしも落ち着いて来て、もうスグ春だし、そろそろ婚活がしたい。

本気で婚活というまででなくても、コンパに行きたいし。
彼氏が欲しい。

先日、文乃に会おうとなったのだって、そのお願いもあった。

どんなつもりか知らないけど、宿替わりに期限なくダラダラ居座られても困る。

何より睦美が、流されてズルズルしそうだ。


この土曜であれから1週間だから、まあ、せめて日曜?とか。

あと数日で3月も終わるから、3月いっぱい。とか。


「急に、なんで?」

急にってことはないでしょ。

だいたい、そっちが急に来たんじゃん!


怒鳴りつけたいけど、

仕事もしてないっぽいし、住む所がなくて知り合いの家を点々と放浪してるのかも。

睦美の家まで来るなんてよっぽどだ。

「今後の予定が立たないの!」

「ふーん」

腕組をして、仕方ないなといった風に深く考え込んでる。

そんな上から目線で悩むとこ??

いついつまで置いてください、ってそっちがお願いしてくるもんなんじゃないの??

「じゃあ、夏。ぐらい?」

「は!?夏??」

長くない?長いよね??

夏が梅雨明けの7月だとして、4ヶ月ぐらいあんじゃん!
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