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ガーネット弐番館
第6章 ルール
「やっぱり短いか?」

「いやいやいやいや...長いでしょ!」

どんだけ居座るつもりなんだ。

ん?と、不思議そうにこちらを見ている。

そんな不思議がられても。

「春までにしてよ」

「は?春って、スグじゃね?んな急ぐの??」

心底驚いたように見える。

図々しいにも程がある。...よね?

それとも、これも冗談の一環とか?お芝居とか?

笑えないんだけど。

「春までっていつ?1ヶ月もナイとか無理だわ。俺も準備あるし」

「いやいやいや。アンタの準備は知らんがな!」

つい立ち上がり、強く言ってしまった。

びっくりしてこちらを見上げている。

確かに、航平に対してこんなに強く自己主張したのは初かも。

いつもの無表情に跳ね返されてたから。

こうなったら言い切るしかない。

「私にだって、予定があるの!」

このぐらい言ってもいいハズだ。

数秒の沈黙があって、航平が折れる。

「分かったよ...」

はぁあああ。

やっと分かってくれた...。

ぺたりと床に座り込む。

「んなチカラ入れる?」

確かに力入れ過ぎて、喉が乾いた。

ぎろりと航平をひと睨みして、手酌で置いてあった一升瓶からお酒を注いで一気に飲む。

苦笑しながら、航平が空になったおちょこにまた注いでくれた。

「じゃあさ、新元号に変わる時はどう?新しいスタートによくね?」

...急に媚びてきたな。

「そーいうヤツ多いと思うし」

確かに、キリとしてはいいかも。

ちょっと思ってたより先が長いけど。

まあ、仕方ないか。

おちょこをまた空にして、航平の前に差し出す。

「...分かった。いいよ」

「よし、食べよう」


航平が、フライパンの蓋を開けた。

それまで以上にパエリアのいい匂いが部屋に広がる。

「美味しそう〜!!」

エビや貝、お魚やお肉。色とりどりのパプリカやお野菜。
それらが、くるりと円状にカラフルに配置してある。

当然のようにお皿によそって睦美の前に置いた。

「ありがと」

「ん」

優しい。すんごく優しく尽くしてくれてる。

だけど、ずっとこうしてる訳にはいかないんだもの。

「いただきます」


パエリアは、冷めかけていたものの色んな具材の旨味が相まってすごく美味しい。

モールで買ってた、常温で飲むお酒がよく合う。

飲み過ぎないようにしなきゃ。
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