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鳥籠
第4章 chapter 4 終わりを始めた日


ッシャ...ッシャシャッ.......

滑らかな鉛筆の音が響く。

私が少し横を向いた時、彼はいくつかの指示を出し、姿勢は決まった。

ッシャ.....シー....コッコッコ....

スケッチブック越しに、足を組んだ姿でこっちをじっと見る。

普段どこかで出会ったら、私なんて気にもかけられないような美しい男の眼差しが今だけは私だけのものだった。

「いつもの.....ゲンジくん」

マスターは言われもしないのに、琥珀色の波打つ小さなグラスを持ってきた。



「.....」

無言で、会釈すらせず、一心不乱に私を...私のなかを描き出そうとする眼差し。


ッシャ.......


線が一本浮かんでは消える。

その音に、空気に、いつしか私のお腹は熱く火照り、その音が響く度に官能の波が背筋に走った。



「良い位置にほくろがありますね....」


「え?....」

「綺麗だ....」

その言葉と同時に私の下着がじんわりと湿ったのを感じた。

女を見る目か、言葉に偽りなく誰も知らない私を見ているのか、単なるsexよりも遥かにもどかしく、官能的な時間だった。


「出来た...」

絵の出来映えなど解らない私が見ても、一目で解る。

鏡で見るよりも、正直で複雑で、そしてどことなく女の顔をした自分が写し出されていた。


「本当は僕彫刻家なので、これはポートレートかな...」

「これはあげます。」

「え......いただいてしまったら、あなたには意味がないのでは...」

「ポートレートを見ながらじゃ僕は創れない人間なんで....それに今日は前置きもなくあなたを覗いてしまった。」



「衝動に任せて描いたは良いけど、この絵を、表情を無断で僕がもらうわけにはいきません。」


「オオノさんお会計」

彼が席を立って、ようやくまともに呼吸をした気がした。

ハァ.....ハァ......ハァー....


「お互い常連なら、また会うかもしれませんね、それじゃ」

ギィッ.......

彼が立ってから、帰るまで結局顔を見ることもできなかった。
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