この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
MILK&honey
第13章 「いつでも私のうちに来て……?」

かーさんは、物真似の芸人さんだ。
そして、今は、売れてない……と思う。
お家もあるし、お金には、困ってなさそうなんだけど。
最初に会った頃から今まで、ネットで検索しても一度も出てこない芸人さんなんて、売れてるはずが無い。
すごく上手で才能もあるから、そのうち売れるようになるかもしれない。
でも、もしかすると、もっと売れなくなるかもしれない……。
そしたらきっと、ここに住めなくなっちゃうんじゃないかな。家賃とか高そうだもん。
で、お風呂の無い四畳半のアパートとか、床が抜けそうな一軒家とかに引っ越さなきゃいけなくなるかも……
『るりちゃん。今までありがとう。俺、ガスコンロ無いとこに引っ越すんだ。ご飯の材料費も出せなくなるから、もうご飯作って貰えない……』
『かーさん……そんな事言わないで……今度は、いつでも私のうちに来て……?』
志望動機の紙を前にして、思わずそんな事を考えちゃって。
頑張らなきゃ!!って思って、つい書いちゃっただけなのに。
反論とかして誤魔化してたら、お兄ちゃんが、すまなそうに言った。
「その『浮き沈みの激しい職業』って、お前の嫌いな僕の仕事の事だよな?」
えっ。
……ごめん、お兄ちゃん。
私、お兄ちゃんは、別に……
……って言って「じゃあ何なんだよ」ってなったら、恥ずかしい。
仕方ないから、お兄ちゃんの話に乗った。

