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MILK&honey
第16章 ……聞かなかった事にしよう。

なんで……
なんで俺は、本屋の女性雑誌売り場で、好きな子にずーーーっと前から好きな人が居るなんて事実を、知ってしまったのだろう……。
「すごかったんですよー、るりが恋に落ちた瞬間!」
やめて、姫ちゃん……ちくちく針で突っつかれてるみたいだから……
って、言えない。いろんな意味で言えない。
「一年生の時は同じクラスだったんだけど、その日は学校来てから、ぼーっとしてて……」
るりちゃん……学校来る前に、そいつに会ったの……?
その日お腹が痛くなって、休んだら良かったのに……
「それでー、先生に怒られたりして……珍しいなーと思って、休み時間にどうしたの?って聞いたら『どうしよう、すごい好きな人が出来ちゃった』って、こそこそって……」
「……へー……」
ぐさぐさ刺さる。
相槌打つ気なんてないのに、勝手に声が出た。
「るり、あんまりきゃーきゃー騒いだりしないのに、かっこ良くて可愛くて色っぽくって大好きになっちゃったんだけどどうしようって……あのるりがそんな風に言うなんて、すごくないですか?!」
「……どんな奴だよ……」
考えた事が、思わず口から出てしまった。
どんな奴だよ、そいつ。
かっこ良くて可愛くて色っぽいだぁ?
……なんなんだ、そいつ……!
「どんなって、ほらー!お兄さんのバンドのぉ……あ。」
「……あ?」
「きゃーーーっ!!すみませんっ!!……お先にっ、失礼しますっ!!」
「あ、ちょ」
姫ちゃんは持ってた雑誌を雑誌の山に落として、脱兎のごとく逃げ去った。
『お兄さんのバンドのぉ……』
気になりすぎる、一言を残して。

