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MILK&honey
第18章 俺も、毎日、泣いてんだけど……?!

「なー……巧ー」
仕事場での休憩の合間に、巧に話し掛けた。
「…………………………」
居ないもののように、扱われた。完璧な無視だ。
「お前っ、なんで無視すんだよっ!」
「……今ここには、僕とヒカリしか居ない筈だが」
「はぁ?!」
……けっ!!何言ってやがんだこの野郎!!
と言った所で、返事は貰えない。
「ねー、タクミ?」
「何だ」
仕方ねーから、ヒカリになっとく事にする。
がさがさするスカートの裾を整えて、膝を揃えて座り直した。
「るりちゃん、どうかしたの?」
「どうして」
「最近、来ないから……」
『ありがとう、お世話になりました。』
遠征だのライブだの収録だののクソ忙しい中でやっとちょっぴりだけ帰った家には、るりちゃんは居なくて。
あちこち八つ当たりしながらリビングのソファに座ったら、あっという間に寝落ちした。
で、目が覚めたらまたるりちゃんは居なくて、荷物も無くなってて、そんなメモだけ残ってた。
不吉な……!
家出みてーじゃねーかよ!!!!
そのまま、連絡が来ることも無く。
どうしたのかなって思ったんだけど……。
連絡しても出てくれねーし、返信も来ねーし、既読も付かねー。
「受験の真っ最中だからだろ?」
「そう……かもだけどー」
「ちょうど良いじゃないか、僕らも居ないし」
「んー……」
今週は、遠出はしてない。遠出はしてねーが、夜も仕事だ。家に帰れない。帰れてもるりちゃんが来てたのとはすれ違いの時間だったり、昼夜逆転で寝てたりする。
だから、るりちゃんが来てくれてたとしても、顔も見られねーし声も聞けねんだけど……
……けど、来てくれた日は、なんとなく気配がすんだよな。殺伐とした空気に水やっといてくれた、みたいな。
るりちゃんが来ねーと、そんな空気の潤いすら皆無だ。
……それに。

