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MILK&honey
第21章 「……ただいま。」

「ただいまー」
玄関を入ると、電気が点いた。
見慣れた廊下。でも、しばらく見てなかった廊下。
「上がって、るりちゃん!……遠慮しないで、早く早く!」
たたきでかーさんの脱いだ靴をぼーっと見てたら、手招きされた。
今日は荷物を持ってるからなのもあるけど、かーさんは靴を足でささっと脱ぐと、いつもそのまま脱ぎっぱなしだ。だから、自分の靴を脱いで上がったら、二人分の靴を揃える。
そんなことさえ、懐かしい。来なくなってから、それほど経って居ないのに。
かーさんは、まずはバッグをリビングに置いた……みたい。
そのあと、手を洗うより、洗濯物を出すより先に、キッチンの中で何かしている。
「るりちゃん、腹減ってないー?」
冷蔵庫を開けて、覗いてる背中。
「るりちゃんの受験前の頃ほどじゃねーけどさー」
のんびりした、優しい声。
そんなことして大丈夫かなと思ったけど、思い切って近付いて、
「最初来てくれた時よりは、冷蔵庫の中身有る……っ」
肩のあたりに、おでこを付けて、
「……ただいま……」
「……るりちゃん……」
ぎゅっと、抱き付く。
ただいま、かーさん。
ただいま、かーさんのお家。
懐かしい。嬉しい。安心する。
また来れるって、思ってなかった。
「また、ここに来ても良いの?」
「来ても良い、って……んな事、」
くるっとこっちを向いたかーさんの眉間には、なぜか、皺が寄っていた。

